
言葉だけでなく、話者の気持ちを伝えられる通訳者に
英語通訳者養成コースリー 仲宗根 尚子さん
サイマル・アカデミーに入学したきっかけ
将来的には、ハイレベルな通訳者のみが生き残る時代になると感じ、基礎力を身につけ、成長の余地が大きい通訳者になるためには、通訳学校での訓練が不可欠だと考えました。通訳学校の中でもサイマルを選んだのは、少数精鋭の高いレベルを誇る講師陣から直接学べる点に魅力を感じたからです。加えて、業界内での評価が高く、将来的に仕事を得る上でも大きな強みになると思いました。
思い出に残っている講師の言葉、クラスメイトとの交流
「才能は決定的な要因ではない。本物の実力とは、海の中でプランクトンが積もっていくようなもの。目に見えず、不毛に思えても、地道に続けた人だけが誰も到達できない場所に辿り着ける」という講師の先生の言葉は、今でも心に残っています。努力しながら気が遠くなるような瞬間には、何度もこの言葉を思い返しました。
実は私が欠席した授業で先生がおっしゃったことを、クラスメイトが教えてくれたのですが、そうした仲間の存在にも支えられました。毎日の通訳練習会や勉強会を仲間と続けることで、地道な努力を重ねることができました。
先生は一人ひとりを丁寧に見てくださり、成長を認めて褒めてくださる瞬間は本当に嬉しかったです。また、私の個性を見つけて「あなたはきっとこんな通訳者になれる」と励ましてくださった言葉は、これからも支えになると思います。
受講中のフリーランス通訳業務について
サイマル・インターナショナルへ登録後、海外ファッションブランドのポップアップイベントにて、来日したブランドVIPの逐次通訳を担当しました。参加者10名程度のグループに対して通訳2名体制、全体では6名の通訳者が配置されていました。
内容は、メディア・プレス向けにVIPが展示説明を行うもので、ブランドの創業ストーリー、音楽や映画などポップカルチャーとの関わり、新技術を用いた製品製作の舞台裏、そして未来展望に至るまで多岐にわたりました。
難しかったことや工夫したこと
当日の進行が流動的で、担当予定外のパートも通訳することになり、柔軟な対応が求められました。ただ、事前に全体資料をいただいていたため、用語や背景知識が頭に入っていたことが大きな助けとなり、予定外の内容にも対応することができました。
また、音楽が流れる没入型の展示空間を移動しながら通訳する形式だったため、聞き手の注意を引きつけ続ける難しさがありました。話者と呼吸を合わせ、話者の表情や感情を通訳に反映すること、ジェスチャーを交え、聞き手とアイコンタクトをとり、腹式呼吸で声を響かせることなど、メッセージが確実に届くよう工夫しました。
現場で活きたアカデミーの訓練内容
準備では、事前資料をもとに生地加工に関する技術用語やファッション業界特有の表現をリストにまとめました。また、展示の説明文を日英併記に編集して何度か音読し、ブランドについても記事やYouTube動画を通じて理解を深めました。実際に使える知識・語彙(アクティブボキャブラリー)として定着させるには何をどこまですればいいか分かるのは、授業の予習で毎回鍛えられているおかげだと感じています。
通訳業務を経験して
もともとファッションに関心があったことと、事前準備を丁寧に行えたことで、ブランドの世界観や話者のメッセージを深く理解し、フィーリングを共有しながら通訳することができました。自信を持って通訳に臨むことで、話者が安心して言葉を任せてくださるのを感じ、一体感のあるやり取りが実現しました。「現場での不安を払しょくするのは準備しかない」という先生の言葉を、改めて実感する機会となりました。
また、長めに話すタイプの話者の逐次通訳でも、情報を落とすことなく伝えられた点を周囲の通訳者の方々にも評価していただきました。アカデミーで培ったスキルを現場で実感できたことは、大きな励みとなり、今後の訓練へのモチベーションにもつながっています。
今後の目標
今後は、同時通訳を中心とした社内通訳の仕事を通じて、スキルと業界知識を高めていきたいと考えています。現在はアナウンススクールで発声や滑舌、訛りの改善に取り組んでおり、聞き手に負担をかけず、自然に伝わるデリバリーをめざしています。
社内通訳の経験を積んだ後はフリーランスとして活動し、将来的には会議通訳者として、幅広い分野に対応できる力を身につけたいと思っています。言葉だけでなく、話者の心を伝えられる通訳者が目標です。
これから通訳者をめざす方へ
通訳学校に通った数年間で通訳スキルは大きく伸びましたが、それ以上に得たものもありました。政治や経済への理解が深まり、関心の幅が広がったことで、動画や読書、日常会話の内容まで変化し、世界の見え方が豊かになったと感じています。継続的な学びの中で壁にぶつかり、それを乗り越える経験を重ねたことは、通訳者として長く学び続けるための基礎力につながっています。
「変わりたい」「成長したい」と思う方には、通訳学校での学びをぜひおすすめしたいです。授業の出来や進級の結果に一喜一憂してしまうこともありますが、出発点や得意・不得意、置かれている状況は人それぞれです。だからこそ、自分のペースで着実に進んでいくことが大切だということも、ぜひお伝えしたいです。
リーさんの受講クラス
通訳Ⅲ→通訳Ⅳ→会議通訳Ⅰ→会議通訳Ⅱ