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通訳・翻訳にかかわる仕事情報

IR翻訳の特徴と繁忙期

東京証券取引所では、2025年4月にプライム市場の英文開示を義務化しています。決算情報や適時開示情報については、日本語と英語の同時開示を求めています。その結果、事業会社の決算関係資料の翻訳が急増しています。この記事では、IR翻訳の内容や繁忙期について詳しく見ていきます。

IR翻訳の特徴

Investor Relations(IR)は事業会社の投資家に向けての広報活動です。決算情報や事業計画の開示を行い、投資を募ります。こういったディスクロージャー(以下DC)資料の翻訳は、繁忙期に短納期で一気に業務量が増えるのが特徴です。また、外国人投資家向けなので、日本語から英語の翻訳となります。
金融全般、決算に関するバックグラウンドがあれば一層良いですが、専門知識は金融業界出身ではなくても、身につけることは可能です。

IR翻訳に向いている人

投資の材料となる資料ですので、数字の間違い、日本語から英語に翻訳した場合の桁の間違いや、固有名詞の間違いなどがないように、細かい所に気づける方が向いています。また、投資判断がぶれないように、以前に翻訳した文章と同じ表現を使用することも多く、前例を忠実に踏襲することも期待されています。

一つひとつの文書の締め切りが短く、日本語資料が完成しないうちに翻訳を始めることもあります。その場合は途中で文章が差し替えになることもしばしばで、そういった細かい作業に柔軟に対応する必要があります。


IR翻訳の業務量や繁忙期

四半期決算の度に必要となりますので、4~6月、8月、11月、2月が繁忙期です。特に5~6月にかけては量が多く、この間はあまり休日を取らないという翻訳者もいます。まとまった収入となるため、ディスクロージャー資料を中心に翻訳し、オフシーズンには旅に出るといった働き方も可能です。

文章自体に工夫をこらすというよりも、速く正確に規定を守った文書を作成する能力が必要なので、理系の方や、特許翻訳、技術翻訳を中心にしている方がDC翻訳も行っているという場合も多いです。

翻訳初心者の方は、まずはチェックの作業からが入りやすいでしょう。数字や固有名詞、前年訳との一致を見るファクトチェッカーのお仕事はよく募集広告が出ていますので、そこから翻訳の世界に入っていくこともできるかと思います。興味のある方はまずはチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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