IR通訳の特徴
IRとはInvestor Relationsの略で、事業会社の投資家に向けて広報活動を行うことをいいます。決算情報や事業計画の開示を行い、投資を募ります。IR通訳は主に海外の投資家と日本の企業間で発生する通訳業務となります。
IR通訳は、通訳者としてデビューし、展示会アテンドなどの仕事から、社内会議の通訳を務めるようになったその先にあるお仕事です。企業財務に関して基本的なことは理解しておく必要はもちろん、事業会社の業務内容や、この先どういった事業展開をしていくのかといったことを理解し説明できることも重要です。事業会社に勤務した経験がある方は、その経験が生きてくるでしょう。
通訳者は事前に事業会社の事業内容や決算情報、今後の見通しなどを企業のウェブサイトなどで確認して予習をしておきます。会議に出てきそうな単語を1ページにまとめて、手元に置いて見られるようにするというような工夫も必要です。

IR通訳の種類
会社訪問随行
外国人の投資家が来日し、一日に4~6社の企業を回り、投資の為の情報を集めます。通訳者は投資家が企業の担当者にする質問とその回答を通訳することになります。
通訳者はスケジュール管理も担っています。朝ホテルに投資家を迎えに行き、次に訪問する会社の約束の時間に遅れないようにミーティング時間を管理し、タクシーを拾い、昼食場所もあてを付けておくといった通訳以外の業務も発生します。1つのミーティングの時間は通常1時間程度です。
オンライン会議
以前は電話会議がほとんどでしたが、最近はオンラインでの会議が多くなっています。
オンライン会議はお客様のオフィスで行うことも、通訳者の自宅からリモートで入ることもあります。自宅で通信状態が安定するようにWi-Fiではなく有線回線を用意したり、途中でソフトウェアのアップデートが始まらないように事前に済ませておいたりといった準備も必要です。通訳者が出席者管理をし、会議の関係者が全員揃ったことを確認する場合もあります。
証券会社カンファレンス
ホテルなどで数日間開催され、1-1(ワンオンワン)の会議が1日何コマも入ります。だいたい1社に1名の通訳者が付き、投資家の方が入れ替わる形式で朝から夕方まで担当しますので、原則的には会社訪問随行ほど多くの事業会社を担当することはありませんが、移動時間がない分ミーティングが立て続けに入ることもあります。
ロードショー
会社訪問随行とは逆に、日本企業の社長・副社長など幹部がアメリカや欧州などの投資家を1日に何社も訪問するツアーに同行します。だいたい一週間の日程が組まれ、ディナーのアテンドをすることもしばしばですので、体力も必要とされます。
業務量や繫忙期
基本的には四半期決算が終わった後が忙しくなりますが、特に9月から12月上旬までは繁忙期となります。IRのお仕事だけでスケジュールを埋めていくことも可能です。近年ますます案件数が増えており、ご自宅からのリモート会議を1日に3本以上入れるというようなお仕事の仕方も可能になってきています。

繁忙期にはほぼ毎日受注し、存分に通訳技術を生かすことができるIR通訳ですが、案件の増加に対し通訳者の数が追いついていません。フリーランスでIR通訳の経験がなく、これからデビューしたい方は、まずは基本の逐次通訳スキルを上げると同時に、経営・財務の知識強化やエージェントで実施するセミナーやワークショップに参加してみるのもよいと思います。そして、登録しているエージェントにIR通訳を希望していることも伝えておくと、繁忙期などどこかでチャンスが回ってくるかもしません。
IRは収入を支えるのに十分なお仕事の量がありますので、通訳者になりたいと思う方には知っておいていただきたい業務です。