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経済活動や政治の現場で活躍できる
「産業翻訳者」とは
みなさんは「産業翻訳」という言葉をご存じですか。産業翻訳はビジネス現場で扱われる文書の翻訳業務で、企業だけでなく、政治・経済分野など、その範囲は多岐にわたります。
ここでは産業翻訳者の概要や活躍できるシーン、必要なスキルなどを中心にご紹介していきます。
産業翻訳とは
産業翻訳は翻訳業界の中でも市場が大きく、扱う文書の種類、分野は様々。ITや医療・医薬、特許や金融など、あらゆる業界で翻訳ニーズがあるため、扱う範囲が非常に広いのが特徴です。それぞれの分野では専門的な内容を翻訳することも多く、語学力はもちろん、その分野に特化した深い知識も必要とされます。
産業翻訳で訳す主な分野の特徴
産業翻訳において翻訳対象になる文書は、各種社内資料をはじめ、パンフレットやカタログ、ニュースリリースなどの広報用資料、契約書など業界を問わず発生します。その他にも、IR資料や製品の仕様書、マニュアル、新薬申請に関わる文書といったものも翻訳の対象となります。以下では、産業翻訳者が活躍する主なジャンルについてご説明していきます。
金融翻訳
銀行や保険会社、証券会社などで使われる文書の翻訳を行うのが金融翻訳です。翻訳する具体的な書類としては、年次報告書(アニュアルレポート)や契約書、目論見書、マーケットレポート、財務諸表などがあります。
医療・医薬翻訳
医療や薬に関する翻訳を行います。実験の報告書や医療機器の申請書類、患者の症例報告書、学術論文など、医療・医薬に関わる様々な文書の翻訳をするため、語学力だけでなく、専門用語や医薬業界の仕組みなど、医薬に関する知識も必要な分野です。
IT翻訳
IT翻訳は、コンピューター・通信などの情報技術に関する翻訳のことです。ソフトのバージョンアップや新しいソフト開発に伴うマニュアルや仕様書などの翻訳、海外のソフトやゲームを現地語化するローカライズなどの仕事があります。
特許翻訳
日本企業が外国へ、あるいは外国企業が日本へ特許を出願する際に必要な文書や資料を翻訳するのが特許翻訳です。特許には独特の書式や表現、言い回しがあるためその形式に則った対応が必要になります。
技術翻訳
自動車や電機製品など、工業技術に関する翻訳を行うのが技術翻訳です。翻訳をする具体的な書類としては、技術仕様書をはじめとする各種仕様書やマニュアル、作業指示書などが挙げられます。
産業翻訳者になるために必要なスキル
産業翻訳者になるためには、語学力に加え、そのジャンルでの専門知識が必須といえます。例えば、金融業界での翻訳者をめざすのであれば、金融業界の仕組みや流れを理解し、専門用語をマスターする必要があるでしょう。医療・医薬翻訳では、薬や医療に関する翻訳がメインとなるため、医学関連の知識がなければ翻訳することができません。
加えて、リサーチ力やパソコンスキルも重要です。専門性の高い文書ではもちろん、その分野の最新動向や背景を踏まえた上で翻訳する文書の場合もリサーチが必須になります。また、どんな業界の文書であっても、その業界の前提となる知識を事前にリサーチするとしないとでは、当然訳文の仕上がりにも違いがでてきます。リサーチには時間を要しますが、そのぶん訳文の精度も上がり、翻訳会社やクライアントからの信頼度も高くなります。
最近は、原稿や関連資料はすべてメールでのやりとりになるため、産業翻訳者にとってパソコンスキルは必要不可欠。少なくとも、Word、Excel、PowerPointなどの基本ソフトを扱える必要があります。また、効率的にリサーチするためには、高度なネット検索術も身につけておくことをお勧めします。
産業翻訳者をめざす場合、まずは自分がこれまで積み上げてきた経験を活かせる分野での翻訳者をめざすのが近道かもしれません。経験がない分野をめざす場合は、「産業翻訳コース」などがあるスクールに通って、専門知識を磨く方法もあります。 専門知識は参考書やビジネス書籍などで補うことも可能ですが、それを翻訳するスキルは、独学で取得するのはなかなか難しいことだといえます。